メビウスの輪


このブログでは日本人男性が描く、タイ人女性
との正解のない恋愛小説を公開しています。

どんなに傷つけあってもメゲない、日本人男性
独特の優しさと強さ(弱さも)から紡ぎ出される
愛の軌跡を追ってみましょう!

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第6章

パンちゃん物語、第6章 携帯電話(15)

奥のステージでは黒人バンドが軽めのスタンダードナンバーを演奏し近くに陣取ったファラン中心の客達と盛り上がっており、そこから少し離れたこのカウンター席は色々なカップルで埋まっている。

タイ人同志のカップルやファランとタイ人の女性、ファラン同志などなど。

日本人とおぼしき男性達も見受けられるが、一目でそれとは判断しにくい。
というのも当然バックパッカーの類は皆無で、殆どの男性がスーツに身を包んでいるからだ。

カジュアルな服装だとその人が普段住んでいる場所の"匂い"みたいな物が見え隠れするものなのだが、ビジネススーツだと皆が没個性的になってしまうようだ。

パンは大き目のグラスにブランデーを注文し、私は取り敢えずウイスキーソーダ(所謂ハイボールですね)を注文し、乾杯した。

「ここは良く来るの?」

「うん、たまに友達と。でも少しの間音楽を聞いたりするだけね。」

「そうか、まあお洒落な感じの場所だけど、ちょっと煩いね。」
 
当時は此処が高級娼婦の溜まり場であることは知らなかったし、それを目的とした男達が集まってくる事など知る由もない。

しかしそれを知った後でも、(ペガサスを休んで)パンがここで小遣い稼ぎをしていたかどうかを詮索する気も無かったし、その必要も無かった。
世の中には、特に男女が付き合っていく上では知らない方が幸せな事も多く存在すると思う。

結局彼女はブランデーをストレートで三杯、私はウイスキーソーダを二杯とテキーラをショットグラスで三杯空けてほろ酔い加減となり、「スパッソ」を後にしホテルへ向かった。



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パンちゃん物語、第6章 携帯電話(16)

ホテルへ着いた後も飲み足りないのか、彼女はミニバーからウイスキーの小瓶を取り出し、オンザロックにして飲み続ける。

私は身に付けていたスーツから携帯や煙草など小物類を取り出してソファー近くのテーブルの上に置きながら、元来酒が強い方ではないのでシンハ程度にして付き合う。

今日の彼女は襟元が大きく開いた形になっている黒いシャツに白の膝丈のボトムという至ってシンプルな格好。

指輪や腕輪などアクセサリー類を付ける事は余り好まなかったようで、首にいつもしていたお守り代わりの金のネックレス以外は見た事が無かったし、他のタイ女性達と違っておねだりされた事もなかった。


ビールを片手に私がソファーに座ると、彼女も隣に座り直してきた。

そしてキス。ブランデーをかなり飲んでいるせいで酒臭い。

キスしているというより、その感触は濃い水割りの氷を口に含んだようだ。

その水割りの氷のようなものが段々と生暖かくなり、私の口の中で蠢く生き物に戻りつつあった時、彼女はおもむろに顔を離して聞いてきた。

「ねえ、お願いが有るんだけれど…。聞いてくれる?」

私はやや身構えながらも務めて冷静に、そして明るく振る舞った。

「なんでしょうか?お嬢様。私に出来る事であればなんでもどうぞ。」

「私が使っている携帯電話は古いモデルで、サイズも大きくとても使いづらいの。よく故障するし、知ってるでしょう貴方も。あなたが持っているそのMOTOROLAのSTARTAKは最新モデルで(97年当時)格好良いわ。小さくて軽いしね。……ねえ、それを私にくれない?」



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パンちゃん物語、第6章 携帯電話(17)

私は唖然とした。
何といっていいか解らずに即答できずに居た。

買ってくれというならまだしも、くれと言われても…。
当然携帯電話は商売の必需品であり、明日も使用する訳だ。

そもそも、この番号は私のであって、彼女のではない。
明日からの仕事に差し支える事は明白である。

御参考までに、アジア地域では日本と韓国を除けばシステムは一緒であり、転送サービスさえ申し込んでおけば、香港でもシンガポールでもタイでも、どこでも一つの電話機で事足りるのである。

当然の事ながら、パンちゃんには以上のような事を説明した上で、きっぱりと拒否した。


「どうして? あなたからの電話を待っているのは私なのよ! 私を愛していないの? 国際電話代だって馬鹿にならないでしょう、私もお金無いし、助けてくれたって良いじゃない!」

前にも書いたが、彼女は酔うと自分の論理に執着し何があっても自説を曲げない傾向がある。
彼女にとっては、たかが携帯電話というモノひとつなのだが、私にとってもされど携帯電話なのだ。

この携帯を彼女にあげて新しい携帯を購入するまでに失われる、今後もたらされるであろう将来の情報・ビジネスチャンスといった機会損失は甚大なので、私としても"はいそうですか"と簡単に首を縦に振る訳にはいかなかったのである。

完璧にすねてしまい苛付きながらむこうを向いて酒をあおり続ける彼女に対し、私がオファーできる代替案は一つだけだった。

「パンちゃん、この携帯電話は今も言ったように仕事でどうしても必要だから、君にあげてしまう事はできない。これは辛いけど、仕方ないことだから解ってね。替りといっては何だけれど、今度タイに来る時に新しいSTARTAKを買ってきてあげるよ。君専用の。但し番号はパンちゃんが今まで使っていた番号をそのまま使って下さいね。国際電話は…、もし緊急に連絡したい時はワンコールで切って、私が折り返しかければ君の負担は少ないでしょう。これならどう?」

すでにトロンとした酔っ払いの目付きに変わってしまっているパンが、こちらを振り向いて少し考える仕種をした後で、もう一度説明して、と言ってきた。

酔っ払っているので、おそらく考えがまとめられないのだろう。
私が次回来る時に新しい携帯を買ってくる事などをもう一度ゆっくりと説明してあげると、今までの憂鬱そうな表情から一転満面の笑みを湛えて急に抱き着いてきた。

彼女の身体を抱きしめ返してやりながら、女性の涙に弱い自分を、馬鹿な奴、まだまだ甘いな、と客観的に見つめていた。


赴任地へ戻った私は、約75,000円相当するチャーコールグレー色の新品STARTAKを買いに走ったのだった…。



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プロフィール

山岳民族の雄

メビウスのポーンちゃんです。
タイの少数民族出身の43歳!!
ある日本人の援助でチェンマイ大学の日本語学科を卒業し、今はタイのチェンライで日本文学を研究しています。
日本人の旦那さんと一児の母
よろしくお願いいたします。

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